泌尿器がん診療

泌尿器科で担当する悪性腫瘍は腎がん、腎盂・尿管がん、膀胱がん、尿膜管がん、尿道がん、前立腺がん、精巣がん、後腹膜腫瘍などで、それぞれの診断、治療、フォローアップを行っています。

がんの告知に関してはインフォームドコンセント(正確な情報をわかりやすく提供し、納得していただいて治療を選択する事)を診療の基本としています。特に治療に関しては手術、抗がん剤化学療法、放射線療法を用いて集学的(組み合わせた)治療を行っており、ガイドライン(現時点で最も推奨される治療)に沿った標準治療を提供しつつ、内視鏡を用いたより患者さんに負担の少ない治療、QOL(生活の質)を大切にした治療を実践しています。

当院では緩和ケア内科、がん看護専門看護師などからなる緩和ケアチームとも密に連携し各種泌尿器がんの診療や診断・治療を行っています。気になる事があれば気軽に受診・ご相談下さい。

前立腺がん

  • 前立腺がんとは?
  • 前立腺がんは、男性のみに存在する前立腺と呼ばれる臓器で起こるがんです。前立腺は尿道と射精管が貫いており、膀胱よりもより骨盤の深いところに位置しています。前立腺は精液を作る役割を果たしていて、前立腺がんは前立腺の細胞が無秩序に異常成長し、増殖することで起こります。


  • 前立腺がんの診断
  • 病気の最初の診断にはPSAと呼ばれる腫瘍マーカーによる血液検査で行います。PSAの値は一般的には4以上が異常値とされています。前立腺がんが疑われた場合は超音波やM R Iなどの画像を撮る検査、そして前立腺から組織を採取して顕微鏡で調べる生検が行われます。もし、前立腺がんが見つかった場合、医師はがんがどれくらい進行しているかを判断し、適切な治療を提案します。


  • 前立腺がんの治療
  • 治療法にはいくつかの選択肢があります。転移のない早期がんの場合、手術(前立腺全摘除術)や放射線療法、厳重な経過観察が提案されます。また、進行がんであった場合はホルモン療法や化学療法といった全身治療が必要な場合があります。治療法は病気の進行具合や患者さん個々の健康状態に併せて提案やご相談をさせていただきます。前立腺癌の早期発見が重要です。定期的な健康診断や排尿に異常を感じたらすぐに医師に相談することが大切です。

膀胱がん

  • 膀胱がんとは?
  • 膀胱がんは膀胱の内側の細胞(尿路上皮)に異常が生じて無秩序に増殖することで発生します。発症には喫煙(副流煙を含む)が大きく関わっており、他には慢性的な炎症や加齢、化学物質などが関連しているとされています。膀胱は下腹部に存在し、尿を溜める働きのある袋状の臓器です。そのため、膀胱がんは尿のトラブルとして痛みのない血尿や頻尿などの症状を引き起こすことがあります。膀胱がんは膀胱の内側の細胞(尿路上皮)に異常が生じて無秩序に増殖することで発生します。発症には喫煙(副流煙を含む)が大きく関わっており、他には慢性的な炎症や加齢、化学物質などが関連しているとされています。膀胱は下腹部に存在し、尿を溜める働きのある袋状の臓器です。そのため、膀胱がんは尿のトラブルとして痛みのない血尿や頻尿などの症状を引き起こすことがあります。


  • 膀胱がんの診断
  • 膀胱がんの診断は、尿検査(細胞検査)、血液検査、超音波検査、CTスキャン、MRI、膀胱鏡検査など、さまざまな方法で行われます。これらの検査は、膀胱の異常を検出し、がんの存在と進行度を確認するために行われます。


  • 膀胱がんの治療
  • 膀胱癌の治療は、がんの種類と進行度、患者さんの全般的な健康状態によります。転移のない膀胱癌はまずは経尿道的なお腹を切らない手術を行いがん細胞の悪性度や進行度を判断します。その後は必要に応じて膀胱内への薬物注入療法(BCG:結核菌治療、抗がん剤)を行います。しかし、薬物治療で効果が乏しい場合や局所で進行している場合は膀胱そのものを全て摘除する膀胱全摘除術を行います。この際に局所で進行している膀胱がんに関しては術前抗がん剤治療を併用する事で治療効果を高めるとされており、実施を積極的に行っています。手術に耐えられない患者さんにつきましては抗がん剤を併用した放射線治療の提案もさせていただいております。また、転移のある膀胱がんの場合は抗がん剤治療を行います。近年は免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤)が登場し、治療効果によっては従来の抗がん剤と治療と組み合わせて治療を考慮する事もあります。

    膀胱癌の診断と治療は複雑で、患者さんご自身やご家族にとっては困難な選択となるかもしれません。疑問や不安については遠慮なくお申し付け下さい。

腎盂尿管がん

  • 腎盂尿管がんとは?
  • 腎臓で作られた尿が通る腎盂や尿管の内側を覆っている粘膜(尿路上皮)から発生する比較的まれながんです。腎盂尿管がんは、50~70歳代の男性に多くみられる病気です。腎盂尿管がんの発症には膀胱がん同様に喫煙歴が大きく関わっているとされています。一般的には症状が現れにくいがんであるため初期には無症状であることも多いです、健康診断での尿潜血の指摘や症状のない目に見える血尿、膀胱がんの全身検査で見つかる事が多いです。一般的には腎盂尿管がんは膀胱がんと併発しやすく、再発しやすいがんとされています。


  • 腎盂尿管がんの診断
  • 腎盂尿管がんの診断は、尿検査(細胞検査)、血液検査、超音波検査、CTスキャン、MRI、膀胱鏡検査など、さまざまな方法で行われます。腫瘍の存在が疑わしい場合は腎盂や尿管を造影(逆行性腎盂造影)したり、直接尿管から尿を採取したり、カメラで腎盂尿管を観察したり(尿管鏡検査)する事で診断を行う事もあります。


  • 腎盂尿管がんの治療
  • 腎盂尿管がんの治療は、がんの進行具合や患者さんの全般的な健康状態によって異なります。転移がなく、浸潤傾向のない腎盂尿管がんは腎臓と尿管の全摘除と膀胱の部分切除を組み合わせた手術が必要となります。また、局所で進行を疑う場合はリンパ節郭清を併用し、周術期の抗がん剤治療や免疫治療(免疫チェックポイント阻害剤)を行う事もあります。転移のある腎盂尿管がんは抗がん剤治療と免疫治療を組み合わせて治療を行います。腎盂尿管がんは発見されにくいがんです。定期的な健康診断を受け、気になる所見が指摘された場合はすぐに泌尿器科に相談することをお勧めします。ご不明な点がございましたら、当院泌尿器科にお問い合わせください。

腎がん

  • 腎がんとは?
  • 腎がんは、腎臓の異常細胞が無秩序に増殖することで発生します。腎臓は、体内の水分や電解質、必要無くなった物質を排出するために尿を生成する重要な臓器でで、左右に2つあります。一般的には腎癌は進行するまで無症状であることが多く、現在は健康診断や偶然の検査で見つかることが多いです。しかし、無症状であるため進行した状態となって体調不良を訴える事で見つかることもあります。腎癌の正確な原因は不明ですが、高血圧や肥満、遺伝など関連していると考えられています。


  • 腎がんの診断
  • 腎癌の診断は超音波検査、CT検査(造影剤を用います)、MRI検査、血液検査など、さまざまな方法で行われます。これらの検査は、腎臓の異常を検出し、がんの存在と進行度、転移の有無を確認するために行われます。


  • 腎がんの治療
  • 腎癌の治療は、がんの進行具合や患者さんの全般的な健康状態によって異なります。転移がなく、浸潤傾向のない小径(4-7cm)の腎がんは腫瘍部のみの腎臓を部分的に切除が出来る可能性があります。より大きな腫瘍の場合は腎臓摘除が必要となります。また、転移のある腎癌の場合は分子標的薬や免疫療法(場合によっては手術も)を組み合わせて治療を行います。腎がんは早期に発見されれば経過は悪くはないとされています。定期的な健康診断を受け、気になる所見が指摘された場合はすぐに泌尿器科に相談することをお勧めします。ご不明な点がございましたらお問い合わせください。

精巣腫瘍

  • 精巣腫瘍とは?
  • 精巣は男性特有の臓器で、男性ホルモンや精子を作る役割を持っています。この精巣から発生する腫瘍が精巣腫瘍と呼ばれています。精巣腫瘍のほとんどは悪性であり、その発生頻度は人口10万人あたり1~2人とされています。特に20~30歳代の若年の男性で発症する事が多いとされています。腫瘍が悪性(セミノーマ、非セミノーマ)であった場合は早期発見・治療をする事で治癒する可能性が高くなるとされています。精巣腫瘍の主な症状は、そのほとんどが痛みを伴わない精巣の腫れやしこりを自覚する事です。症状がみられたら早めに病院を受診することが大切です。


  • 精巣腫瘍の診断
  • 精巣腫瘍の診断は触診(手で触れて腫瘍の大きさや硬さを確認する)、超音波検査、血液検査検査(腫瘍マーカー:α-フェトプロテイン(AFP)、ヒト絨毛性ゴナドトロフィン(β-HCG)のβユニット、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH))、CT検査、病理組織検査(精巣摘除術で組織の確認)を行います。


  • 精巣腫瘍の治療
  • 精巣腫瘍の治療は主に手術と抗がん剤治療が中心です。手術は高位精巣摘除術(足の付け根あたりから精巣を摘除する)と呼ばれる治療法であり、一般的には診断後に可能な限り早期に行う事が推奨されている手術です。術後の病理検査による組織の程度や画像による進行状況で放射線治療や抗がん剤治療を行います。術後の補助治療を除いて、抗がん剤治療は複数の抗がん剤を併用する多剤併用治療が行われます。また場合によっては腹部の大血管周囲のリンパ節摘出(後腹膜リンパ節郭清術)を検討する可能性もあります。治療後のフォローアップは厳重に管理しなければならず、精子等の温存も必要になる可能性があります。具体的な治療法は患者さんの状態や腫瘍の種類、病期により異なるため、治療方針は医師と相談しながら進めていく事が大切です。精巣腫瘍は早期診断・治療がとても重要です。精巣に異常を感じたらすぐに泌尿器科にお問い合わせください。